PMOの役割とは?PMとの違いや導入メリットもプロジェクト経験者が解説

公開日:2021.10.20(水) 更新日:

PMOの役割とは?プロジェクトの現場から語る

プロジェクトを適切にマネジメントするためには、進捗率や欠陥密度、コスト予実等の定量面やテストの網羅性やリリースの妥当性といった定性面の把握を行うことが重要となります。

これらを”見える化”することにより、プロジェクトマネジメントを支援する職種がPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)です。

PMOは多くの企業で導入されているにも関わらず、役割が正しく理解されていないことも多いため、プロジェクトにおいて有効的に活用されていないケースも多々あります。

この記事では、実際のプロジェクト経験を踏まえた上で、PMOの役割について分かりやすく解説したいと思います。

PMOとは

PMOとは

PMOとはProject Management Officeの略称であり、プロジェクトマネジメントを支援する組織を表す言葉です。

通常、プロジェクト管理はPM(プロジェクトマネージャー)の役割ですが、大規模プロジェクトにおいては、到底一人でプロジェクト管理業務を担うことはできません。

そこで、組織としてプロジェクトマネジメントを実施するPMOが重要となります。

PMとPMOの役割の違い

PMはプロジェクトの総責任者です。プロジェクト全体を指揮する役割を持つポジションとなります。

一方、PMOはプロジェクトマネジメントに特化した組織です。 マネジメントに関連する業務を遂行し、PMを支援する役割を担います。

  • PM(プロジェクトマネージャー):プロジェクトの総責任者
  • PMO(プロジェクトマネジメントオフィス):プロジェクトマネジメントの支援を行う組織

PMの役割はプロジェクトの運営や管理全般を担うことであるため、意思決定が早い反面、大変な管理稼働が掛かっていました。

さらに昨今ではサービスやシステムが複雑化してきており、プロジェクトに関係するステークホルダーが過去とは比較できないほど増えている傾向にあります。

このため、一人のPMがプロジェクト全体をマネジメントするには限界があります。

そこで重要な役割を果たす組織がPMOです。

PMOはプロジェクトマネジメントの土台となる環境を整え、PMがプロジェクトの意思決定に集中できるよう支援する役割となります。

様々なPMOの形態

PMOはプロジェクトマネジメントが必要な様々な場面で導入される組織です。

上述した大規模プロジェクトの実施ケースはもちろんのこと、自社内に多数のプロジェクトが設置されている場合では、各プロジェクトの横串を通す役割として導入されることもあります。

また、PMOの人員としては社内人材だけでなく、社外人材が活用されるケースも多いといえます。特に大規模プロジェクトの実施においては社内リソースが不足しやくなります。

その場合、コンサルティングファームなどにPMO人材の提供を受けることになります。

一方で、ITベンダーなど恒常的に多数のプロジェクトが実施されている企業においては、社内にPMO部門を設置するケースも多いです。

PMOの導入メリット

PMOを導入することには様々なメリットがあります。一般社団法人である日本PMO協会では、PMOのメリットは「プロジェクト現場でのメリット」と「企業経営でのメリット」の2点に分けられるとしています。

以下では、それぞれのメリットについて紹介します。

プロジェクト現場でのメリット

プロジェクトの現場では、PMOの導入により以下のようなメリットを得られます。

これらのメリットを大きく整理するとプロジェクトの品質向上とプロジェクト管理負荷の低減の2つといえるでしょう。

PMOを導入し、組織としてプロジェクトマネジメントを実施することで、PMの負荷低減はもちろん、専門性を生かしたプロジェクト品質の向上が期待できます。

  • プロジェクト教訓・手法・ベストプラクティスの共有
  • プロジェクト品質の高度化
  • プロジェクト関連リソース確保・調達の迅速化
  • プロジェクトスケジュール管理の高度化
  • プロジェクトスコープ管理の高度化
  • プロジェクトコスト管理の高度化
  • プロジェクトリスク管理の高度化
  • プロジェクトメンバーとのコミュニケーションの高度化
  • プロジェクトステークホルダー管理の高度化

企業経営でのメリット

一方で、企業経営の視点に立った場合、PMO導入には以下のメリットがあります。

一般的にPMOは経営とプロジェクトをつなぐ役割を与えられることが多いです。

PMOによりプロジェクト状況を適切に把握し、経営層へエスカレーションすることで、経営においてもメリットを得られます。

  • 経営戦略のより確実な履行、ビジネス価値の最大化
  • プロジェクトマネジメントの進行に適切な環境の整備
  • プロジェクトマネジメントの手法・知識の標準化
  • プロジェクト進捗・状況の「見える化」および確認の最適化
  • プロジェクト優先順位付けおよび経営判断の迅速化
  • プロジェクトマネジメント人財の安定的育成
  • プロジェクトへの経営者支援工数の軽減

出典:<日本PMO協会(NPMO)公式>「PMOとは?」

一方で、PMOを導入するためには当然人的リソースやコストが必要となりますので、これらのメリットと自社の状況を鑑みて設置可否を検討する必要があるでしょう。

PMOの役割とは

PMOの役割とは

PMOの役割はプロジェクトによって全く異なるものであり、担当となるタスクも非常に多岐にわたりますが、一般的には下記で説明する役割を担うことが多くなります。

プロジェクト推進に必要な要素をマネジメントする役割

PMOはその名前の通りマネジメント業務を担う組織です。

予算、スケジュール、進捗、課題など、プロジェクトの状況に応じて様々なものの管理を役割としています。

問題が発生した場合は、新たなヒューマンリソースの獲得、予算増額の交渉、スコープの調整などを行い、プロジェクトが成功する環境を整えていくことが求められます。

常にプロジェクトの目的を考えながらマネジメントを行う要素、粒度、手段を検討し推進していくことがポイントです。マネジメントすべき対象はその案件、工程、状況などによって変わることになります。

生産性向上を目的としたコミュニケーションの円滑化

PMOにはコミュニケーション活性化の役割も求められます。プロジェクトの成功に関わる部分であるため、マネジメント業務と同じぐらい重要なものになります。

プロジェクトはたった一人で行うものも確かに存在しますが、PMOが配置されるようなプロジェクトでは基本的に多くのチームが関係します。

このような場合、考え方が異なるチームをうまく連携させプロジェクトを推進していく必要があるでしょう。

この場合のPMOの具体的な役割は、コミュニケーションルールの整備やツールの導入に加え、必要であれば積極的にチームの間に入って円滑に調整できるようサポートすることです。

プロジェクト全体を俯瞰してのリスク検知、課題対応

大規模なプロジェクトであればあるほど、リスク検知や課題対応が求められることが多くなります。プロジェクトへの参加チームが多い場合、どうしてもその狭間での問題が発生します。

たとえば、システム開発の現場であれば、要件は業務チーム、実装は開発チームが担当するということが通常です。

その際、画面レイアウトのようなシステム要件とも実装とも言えるものは、業務側とシステム側双方が相手側の担当だと思い込み、タスクが間に落ちてしまうことはよくあります。

PMOはプロジェクト全体を俯瞰し、このようなチーム間の狭間で発生するリスクを検知する必要があります。その上で必要であれば課題対応も行います。

PMOの役割と職種

PMOの役割と職種

ここでは、日本PMO協会で記載されているPMOの役割と職種についてご紹介します。

プロジェクトの規模や企業文化によって、これらの役割毎に担当者が配置・分担される場合や、複数の役割を一人で担う場合もあります。

出典:<日本PMO協会(NPMO)公式>「PMOとは?」

PMOアドミニストレータ(事務担当)

プロジェクトを推進するには、様々な社内プロセスの段取りやプロジェクトのデータ収集がが必要となり、これらの事務的な業務を担う役割が、PMOアドミニストレータです。

具体的には、会議体の設定やプロジェクトメンバの稼働管理、経費処理などが挙げられ、またプロジェクトの進捗状況や課題の対応状況を収集することも職務の一つです。

このように、プロジェクトの一次データにアクセスできる担当であるため、情報の鮮度と信頼性に責任を負う立場でもあります。

また、他のプロジェクトのPMやPMOと連携しながら、情報交換したり、さまざまな相談ができる場を設けたりするのも重要な役割と言えるでしょう。

PMOエキスパート(情報分析、ルール策定)

PMOエキスパートとは、PMOアドミニストレータが収集した情報を分析し、プロジェクト内の約束事(ルールや標準規約)を取り決める役割です。

例えば、システム開発を伴うプロジェクトの場合は、プロジェクトの特性に応じた開発手順や品質管理方法をルール化する必要があります。

具体的な例としては、『プロジェクト計画の策定』が挙げられます。

開発プロセスの定義や採用する開発言語・パッケージ、開発ベンダとの役割分担など、予め決めておかないと進め方が分からなくなったり、後から合流するプロジェクトメンバをレクチャーすることができません。

他にも、品質、進捗、コストを適切にコントロールするためのルールや標準化を策定する役割があり、これまでの豊富な経験が求められます。

プロジェクトには不確定要素が付き物なので、PMOエキスパートには状況に応じてルールや標準規約を見直す柔軟性も必要です。

PMOマネージャー(PM補佐)

PMOマネージャーとは、PMO組織自体をマネジメント・管理する役割を担う存在です。

PMOは複数のプロジェクトを横断的に支援するため、マネジメントのノウハウや手法が集まりやすく、他プロジェクトへ適用させることで、マネジメント品質を向上することが可能です。

例えば、多くの問題プロジェクトを抱えていた企業では、PMOが過去の様々なプロジェクト失敗例から原因を分析し、リスク審査基準を制定しているところがあります。

プロジェクト開始前にリスク審査させることで、未然にリスク検知をすることができるでしょう。

そのためPMOマネージャーに向いている人として、単一プロジェクトだけでなく、全体を広く俯瞰した課題設定と解決策を検討する戦略的な思考を持った人が挙げられます。

このように、PMOの組織戦略および計画の策定がPMOマネージャーの主な役割です。

さまざまなプロジェクトの知見とノウハウ、スキルを持つPMOマネージャーは、PMからの信頼も厚く、補佐的な役割を担うこともあります。また、PMOメンバーの稼働管理、育成計画もPMOマネージャーの役割となります。

クロスオーバーには能率協会グループとしての業務改善のノウハウや業務知見があり、そのノウハウがある人がPMOの役割に入るため、他と違う付加価値を提供することできています。

役割から考えるスキル・適性と資格について

役割から考えるスキル・適性と資格について

ここでは、PMOの役割を果たすために必要なスキルや適性について解説したのち、PMOとして持っていると良い資格について解説します。

スキルについて

PMOの役割はプロジェクト情報を見える化することであり、標準ルール・報告書などの文書作成に掛かる業務が大半となります。そのため、誰が見ても分かりやすく、理解しやすい文章作成スキルが必須です。

また、当然ながらプロジェクトマネジメントのスキルも必要となりますので、マネジメント手法を体系化した『PMBOK』などを参考に学んでおく必要があります。

スキルや知識は机上で理解するものではなく、実践で使って始めて理解したと言えるので、ひたすら経験を積み続けることが大事です。

適性について

PMOの役割から鑑みて、最も重要なのはコミュニケーション能力です。

プロジェクトでは多くのステークホルダーと協力しながら物事を前に進める必要があります。

一方でプロジェクトメンバも人間なので、ルールを一方的に押し付けたり、高圧的な態度を取ると相手も離れていきます。

また相手に寄り添い過ぎるとルールが形骸化してしまうので、指摘すべき点はしっかりと指摘するスキルも必要です。臨機応変に対応できる高度なコミュニケーション能力が求められます。

さらに、プロジェクトの一次情報を扱うこともPMOの役割であり、几帳面さも重要です。

PMOが収集した情報はプロジェクトの意思決定に直結するため、情報を放置・歪曲・バイアスをかけたりすると、PMが誤った判断を下しかねません。

メンバから集めた報告内容が”事実”か”所見”を切り分けて、客観的な情報として粛々と積み上げていく几帳面さが重要です。

資格について

資格が無いとPMO業務ができないわけではありませんが、持っていると役立つ資格について紹介します。

一般社団法人PMI日本支部が主催している資格に「PMP認定」があり、プロジェクトマネジメント手法やノウハウを体系化した「PMBOK」に基づいたPMP認定試験が用意されています。

社内研修でもPMP研修が用意されている会社も多く、講義とPMP試験がセットになっています。こういった研修制度があれば、活用されることをオススメします。

公共事業の入札条件に「PMP資格を有したPMおよびPMOが在籍していること」と明記されていることがありますので、保有して損する理由がありません。

他にも、IPAの「プロジェクトマネージャー試験(PM)」や日本PMO協会の「PMOスペシャリスト認定」、日本プロジェクトマネジメント協会の「PMS資格」、「PMR資格」など、運営団体ごとに様々なPMO資格があります。

今後の将来性

今後の将来性

近年、ITコンサルティング会社はPMO人材を多く抱えており、非常に需要が高いです。

「マネジメント支援は自社のリソースでやりたい」と考える企業が多い一方で、社内にノウハウがなかったり、大規模プロジェクトのため要員が足りないこともあり、PMO業務を外注することが多いです。

特に、PMOはメンバへの依頼や要請、調整が多く、外部の人間を導入することでプロジェクトがスムーズに進むとも考えられます。

現に積極的にPMO業務を外部のITコンサルティング会社へ委託・導入する企業も増えてきました。

PMOの役割には、広く全体を俯瞰する能力、多くのステークホルダーと協業しながら推進するコミュニケーションスキル、進捗・課題・品質などのプロジェクト情報を見える化する能力、それらを取りまとめて理解しやすい資料を作成するスキル、プロジェクトの約束事(ルール・標準化)を策定する能力、等の様々な調整業務がメインとなります。

そして、プロジェクトのリスクはいたるところに潜んでおり、プロジェクト全体を俯瞰した課題設定や解決策の提案、プロジェクトを構成するメンバへのサポートに目を配れるPMOが、市場価値の高いPMO人材になるでしょう。

実際、フリーランスのコンサルタントに案件紹介するサイトでもPMO案件が多く、プロジェクト規模の大小問わず、PMO人材の需要が高いのは事実です。

今後もPMOの本質的な役割が注目されると思います。

まとめ

まとめ

この記事では、さまざまな観点からPMOの役割や具体的な業務内容について解説してきました。

PMOはプロジェクトマネジメントを支援するため、プロジェクト情報の一元管理、分析とルールの策定など、さまざまな役割を担います。

プロジェクトの成功に大きく影響するため、PMOには幅広い知識とスキル、さらにはそれらを使いこなす豊富な経験が求められるのです。

またプロジェクトが高度化・複雑化していくほど、PMOの役割は重要性が増し、さらに注目されています。

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