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公開日:2022.03.02(水) 更新日:
PMOの設置効果や体制図上の適正位置を解説
PMOを設置する効果は、体制図上でどの位置にPMOを設置するかにより異なります。
PMOの設置を検討する際には、自社の設置目的を考慮した上で、最大限効果を発揮するための設置方法を検討しなければなりません。
それでは、PMOの設置位置にはどのような選択肢があるのでしょうか。また、それぞれの設置位置によりどのように効果が異なるのでしょうか。
この記事では、PMOの体制図上の設置位置と効果について、パターンごとに解説します。
PMOの導入目的と役割とは
どのようにPMOを設置するかを整理する前に、まずはPMOを設置する目的や、PMOが担う役割について確認しましょう。
PMOの主な導入目的
PMOはプロジェクトマネジメントを支援するために設置されます。PMOはプロジェクトの総責任者であるプロジェクトマネージャー(PM)を補佐し、PMがプロジェクトにおける意思決定に集中できるようにします。
また、場合により様々なプロジェクトを横断的に支援する目的で設置されるケースもあります。
近年では、システムの高度化・複雑化に伴い、大規模プロジェクトも増加傾向にあります。
PMが一人でプロジェクト管理を実施するのには限界が生じており、組織として環境整備やプロジェクト内で発生する様々なタスクの処理、関係者との調整などの業務を実施するPMOが必要とされています。
PMOの主な役割
PMOの役割は大きく3点です。
- PMOアドミニストレーター(事務担当):プロジェクトを推進するために行う社内プロセスの段取りやプロジェクトのデータ収集等の事務的な役割を担う
- PMOエキスパート(情報分析、ルール策定):プロジェクト内の約束事(ルールや標準規約)を取り決める役割を担う
- PMOマネージャー(PM補佐):PMO自体をマネジメントし、PMOの力を最大限発揮できるようにPMOのリソース管理やプロジェクトの重大課題の解決等の役割を担う
これらの役割を担うことで、上述した目的である「プロジェクトマネジメントの支援」を実現するのが、PMOの位置づけです。
出典:日本PMO協会
体制図上PMOをどの位置に設置するか
PMOの設置目的は「プロジェクトマネジメントの支援」ではありますが、どのように支援を実施し、どの様な効果を得られるかについては体制図上どの位置にPMOを設置するかにより異なってきます。
以下では、パターンごとにPMOの体制図上の設置位置とその効果について解説します。
出典:日本PMO協会
体制図①:プロジェクト事務局型
特徴のポイント
プロジェクト事務局型は、個別プロジェクトを支援するためにPMOを設置するパターンです。
このパターンにおいては、PMOは体制図上PM直下に配置され、PMの補佐役としてプロジェクト全体を統括し、個別案件やサブプロジェクトなどを横ぐしで見通す役割を担います。
プロジェクト事務局型のPMOは特に大規模プロジェクトなどで設置されるケースが多いです。
大規模プロジェクトにおけるプロジェクト管理は、多数のステークホルダー間の調整や進捗管理・課題管理等の大量のプロジェクト管理タスク、細かい事務処理などやるべきことが多く、組織としてプロジェクトマネジメントを実施するPMOの力が有効です。
大規模プロジェクトにおいてはPMが個人でプロジェクト管理を実施するのは限界があるため、PMOの導入を検討すべきといえるでしょう。
設置効果の紹介
体制図上、プロジェクト事務局型でPMOを設置すると、個別プロジェクトにおけるプロジェクト管理の品質向上やタスクの抜け漏れ防止、作業遅延の防止などに効果を発揮することができます。
また、ステークホルダー間の調整役の一元化やプロジェクト標準の作成などによる管理効率化などのメリットを得ることもできるでしょう。
大規模プロジェクトにおいては、様々な領域ごとにサブプロジェクトが設置されるケースも多いため、それらのプロジェクトを共通的な方法で管理することが管理効率上重要となります。
PMOは横ぐし役としてプロジェクト標準を設定することで、管理の効率化を実現します。
また、特に大規模プロジェクトにおいては、経営層への報告など負荷が高いタスクが発生することも多いため、PMOのリソースは重要なものとなります。
体制図②:全社型
特徴のポイント
全社型は、個別プロジェクトにPMOを設置するのではなく、複数のプロジェクトを横断する形でPMOを設置するパターンです。
このパターンにおいては、PMOは体制図上CIOやIT部門長など自社のIT部門の責任者を補佐する形でおかれることになります。
全社型でPMOを設置する場合、自社の管理基準に従って各プロジェクトが運営されているかや、複数の依存関係があるプロジェクトについて両者の進捗状況を確認し、全体として遅延が発生しないようにコントロールする役目などを担います。
また、IT部門責任者の補佐役として経営戦略とIT戦略の整合性や経営報告などを担当することもあります。
マルチベンダーでの開発体制のように、多数のプロジェクトが同時並行で実施されている場合などに設置されるケースが多いパターンといえます。
設置効果の紹介
体制図上、全社型でPMOを設置すると、各プロジェクトの全体的な品質の底上げに効果を発揮することが期待できます。
多数のプロジェクトが実施されている場合、どうしてもその品質はプロジェクトごとにばらつきが生じてしまいますので、PMOはその改善を行っていくことになります。
自社にシステム開発標準が設定されている場合は、その基準を守れているかをチェックします。
また計画書のレビューや稼働判定などプロジェクト管理上実施される各種ゲート判定においてそのサポートを行い、円滑なレビューの実施やゲート通過を実現します。
また、ビジネスの目的を実現するために複数のシステムが必要となるケースはよくあります。
例えば営業部門が所管する販売管理システムと製造部門が所管する製造管理システムが連動して新しい施策を実施したい場合などは、両方のシステムが時期を合わせて連携して稼働する必要がありますが、このような場合PMOは双方のマイルストーンを把握しながら、全体として進捗に遅れが生じないようにコントロールしていきます。
さらに、全社型PMOが経営層への報告を実施するケースもあります。
このような場合、重点監視プロジェクトなどを定義したうえでその進捗に遅れがないか、また自社のIT戦略が順調に実行できているかなどを資料化し、適切に経営層へ報告することで、経営層とのコミュニケーションも実現します。
体制図③:ハイブリット型
特徴のポイント
これまで紹介してきたプロジェクト事務局型と全社型の両方の位置にPMOを設置ケースもあります。このように体制図上双方にPMOを設置するパターンをハイブリット型といいます。
特に大規模な組織や多数のプロジェクトを実施しているような組織においては、多数のプロジェクトの品質を担保しなければなりません。
このような場合に、体制図上ハイブリット型を選択してプロジェクト管理を強化するケースもあります。
設置効果の紹介
このようなハイブリット型では、プロジェクト事務局型、全社型双方の設置方法のメリットを享受することができます。
具体的には、個別プロジェクトにおけるプロジェクト管理品質の改善や効率化と、複数プロジェクトにおける品質底上げおよび全体的なコントロールの双方の効果を得ることができるでしょう。
一方で、PMOのポジションが増加するため、必要となる人的リソースは増加してしまうという面もあります。
また、プロジェクト管理において複数のPMO組織への報告作業が発生してしまう、同じような管理を複数のPMOで実施してしまうなど、場合によっては過剰な管理ともなりがちです。
ハイブリット型でPMOを設置する場合は、これらのデメリットを考慮しつつ、大規模プロジェクトにのみプロジェクト事務局を設置する、または一定規模以上の投資のみ全社型PMOの管理下に置くなど、過剰な管理を避けるための考慮が必要となります。
まとめ:PMOの効果を発揮するために
この記事では、体制図上PMOをどの位置に設定するか、パターンごとに解説を行いました。
PMOの効果を発揮するためには、自社がPMOによりどのような効果を得たいかを認識したうえで、体制図上適切な位置にPMOを設定する必要があります。
また、PMOの設置位置によって、PMOに求められるスキルセットも変わってきます。
自社が体制図のどの位置にPMOを設置したいかにより、必要な人的リソースも変わってくることにも注意が必要です。