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公開日:2022.05.31(火) 更新日:
PMOとして活躍するために必要な4スキルを紹介
近年需要が高まっているPMO人材ですが、専門職であるPMO人材として活躍するためには一定のスキルが必要となります。
また、関連する資格を取得することでより専門性を高めることができます。
PMOの仕事には、プロジェクトマネジメント能力だけでなく、コミュニケーション能力や分析能力など、多様なスキルが求められるのです。
この記事では、PMO人材として活躍するために必要となる4つのスキルセットについて解説します。
PMOとは?役割と主な仕事内容
PMOとは、Project Management Office(プロジェクトマネジメントオフィス)の略称であり、組織としてプロジェクトマネジメントを実施することを意味します。
近年はITシステムが高度化、複雑化しており、IT導入プロジェクトは大規模なものとなりやすいです。
そのような中で、PM(プロジェクトマネージャー)の負荷軽減やプロジェクト品質向上のためにPMOが設置されるケースも増えました。
一方で、IT人材不足は深刻な状況といえます。特に、日本においてはユーザー企業のIT人材が不足しており、課題となっています。
人材確保のため、外部リソースとしてコンサルティングファームなどからPMO人材を調達・導入するケースも増えています。
PMOの主な仕事内容は以下の通りです。
- プロジェクト全体の進捗管理:WBSの作成、スケジュール管理、マイルストーンの設定と監視
- リスク管理:潜在的なリスクの特定、分析、対策立案、モニタリング
- 品質管理:品質基準の設定、品質保証プロセスの確立と監督
- コスト管理:予算の策定と管理、コスト分析、予算超過の防止
- ステークホルダー管理:関係者間の調整、コミュニケーション計画の策定と実行
- 報告資料の作成:経営層や関係者への定期的な報告、重要情報の可視化
- プロジェクト標準の策定:プロジェクト管理手法やプロセスの標準化、ベストプラクティスの確立
- プロジェクト間の調整:複数プロジェクト間のリソース配分、依存関係の管理
- 変更管理:スコープ変更の管理、影響分析、承認プロセスの運用
- プロジェクトメンバーの育成支援:トレーニングプログラムの企画・実施、メンタリング
これらの仕事を通して、PMOはプロジェクトの成功を支援し、組織全体のプロジェクトマネジメント能力を向上させる上で重要な役割を果たします。
PMO人材として業務を実施するためには、一定のスキルが必要となります。
以下では、PMO人材に求められるスキルについて解説します。
必要なスキル①:プロジェクトマネジメント力
PMOはプロジェクトマネジメントを実施するための組織であり、当然ながら仕事をする上でプロジェクトマネジメント力は必須といえます。
それでは、具体的にはどのようなスキルが必要なのでしょうか。
プロジェクトマネジメントに関するスキルは「知識」および「経験」の2つの観点から押さえる必要があります。
知識面で押さえておくべきポイント
知識面については、PMBOK(Project Management Body of Knowledge:プロジェクトマネジメントに関するノウハウや手法を体系的にまとめたもの)などの体系的な知識を身につけておくことが望ましいといえます。
PMBOKでは、プロジェクトの一連の流れとして、プロジェクト立ち上げから計画、実行、監視・コントロール、終結といった5つのプロセスが定義されています。
また、統合、スコープ、スケジュール、コスト、品質、資源、コミュニケーション、リスク、調達、ステークホルダーという10つの知識エリアが定義されています。
PMBOKではこれらを縦横で組み合わせ、各領域でやるべきことを記述します。これにより、網羅性の高い知識体系となっています。
PMBOKのように体系化された知識に沿ってプロジェクト管理スキルを身につけることで、知識の抜け漏れを防ぐことができます。
各領域でどのようなことをしなければならないのか、またその際に進捗管理、課題管理、リスク管理、コミュニケーション管理などどのような管理手法が活用できるのかを押さえておきましょう。
経験の重要性
一方で、単に知識を習得するだけではプロジェクトマネジメントを行うのは難しいのも現実です。
なぜなら、プロジェクトマネジメントの肝は「不測の事態に対処すること」にあるからです。
プロジェクトにおいて、当初の計画通りに物事が進むのは稀といってよいでしょう。
特にプロジェクトの規模が大きくなれば、様々な不確定要素やリスクが存在することになるため、その場その場での対処が必要となります。
このようなときに役に立つのはこれまでの経験です。
全く同様の事態が起きることは珍しいですが、類似する事態が起きることはよくあります。
過去の経験を活用し、今回の問題の解決方法を提案できることは、PMO人材として重要なスキルといえます。
必要なスキル②:資料作成能力
もう一点、PMOとして仕事をする上で備えておきたいのが、資料作成スキルです。
PMO業務における資料作成の難しさ
PMOは多くの場面で資料を作成します。具体的には、プロジェクトの全体進捗や主要課題の報告、経営層への定期的な報告などがPMOの担当となります。
PMOの仕事においては、単に事実を資料化すればよいというものではありません。
プロジェクトにおける情報量は膨大なものであり、その全体管理を担うPMOとしては、その中から重要度の高いものを取捨選択したうえで、効果的に状況を伝える資料を作成する必要があります。
これは、PMOが担当する報告先が、マネジメント層や経営層などの会社の上層部になることが多いためです。
プロジェクト状況については報告が非常に難しいものです。
多少の遅れが発生しているが全体としては問題ないのか、もしくは小さいように見える問題だけれどもプロジェクトの進捗に深刻な影響を与えるのか、その温度感も含めて適切にマネジメント層や経営層にインプットをする必要があります。
PMOに必要な資料作成スキルとは
上述の通り、PMOにおける資料作成作業の特徴は情報の取捨選択にあります。情報の取捨選択と簡単に言っても、様々なスキルが必要となる作業です。
まず一つは、情報の重要度を見抜くスキルです。
例えば、金額的なインパクトとして1億円の影響がある情報と1,000万の影響がある情報でいえば、確実に1億円のほうが重要度が高いといえます。
しかし、実際のプロジェクトにおいては明確に重要度を数値化できるわけではなく、スケジュール・コスト・品質に対して、どの程度影響を与えるのか、またその確率はどの程度かなどを考慮して重要度を判定する必要があります。
この際、プロジェクトにおいてスケジュール・コスト・品質のどれが必達事項であるのかも大切な視点です。
また、情報の重要度に応じて資料上に適切に配置する能力もポイントといえます。単に箇条書きで情報を書くだけでは、どの情報が重要なのか分かりません。
文字の大きさ・フォントや配置、色使い、図表の利用など、重要度が高い情報を、可能な限り短時間で読み取れるような資料とする必要があります。
最後に、マネジメント層や経営層が懸念しているポイントを抑えることも大切です。
これは、「一般的にマネジメント層・経営層が知りたいこと」と「具体的な人物が気にしていること」という2つの側面があります。
一般的に、上層部は「経営へのインパクト」を最も気にします。
具体的には、金額の大きさや他の事業計画との連動などがポイントとなるでしょう。
加えて、バイネームで説明相手をイメージしたうえで、過去の言動や性格などを考慮して説明内容を決めることも大切です。
必要なスキル③:コミュニケーション力
PMOの仕事の多くは調整といってもよいでしょう。よって、コミュニケーション能力はPMOの必須スキルです。具体的にはどのようなコミュニケーションスキルが必要なのでしょうか。
フットワークの軽さ
PMOは、プロジェクトのコアメンバーとして他のプロジェクトメンバーと頻繁にコミュニケーションをとります。
進捗報告資料では表面的に浮かび上がってこない問題や、潜在化している課題などを早期に発見するためには、プロジェクトメンバーと密接に連携し、情報を集める必要があります。
よって、PMOのコミュニケーションスキルの一つは、フットワークの軽さと言い換えてもよいでしょう。
何か課題が生じたときに、「プロジェクトの誰に聞けばわかるのか?」をすぐに識別し、確認することができると、効率的にPMO業務を進めることができます。
日ごろからプロジェクト内において人間関係を構築できる意識・能力が必要です。
人当たりの柔らかさ
PMOとして仕事をすると、プロジェクトの課題や遅延、失敗などを取り扱うケースも多くなります。
一般的に、人間は自分の失敗を知られたくないものです。
これらの情報をメンバーから聞き出すためには、人当たりの柔らかさも重要です。
その際、必ずしも性格が優しい人物である必要はありません。うまく情報を引き出す能力と言い換えてもよいでしょう。
プロジェクトの運営においては、悪い情報が上がりにくいという構造があります。メンバーのやる気を削ぐことなく情報を集めることは難しいものです。
PMOはプロジェクトの円滑に進めるために、たとえ悪い情報であってもそれがプロジェクトに与える影響を考慮し、速やかに適切な対策を打っていく必要があります。
必要なスキル④:システム導入・開発知識
PMOとしてシステム導入プロジェクトのマネジメントを進めていく上では、システム導入やシステム開発に関する知識は必須といえます。
PMOとして仕事をするためには、システム面に関してどのようなスキルが必要なのでしょうか。
「よいシステムの作り方」という知見
PMOの業務のうち、プロジェクト標準を作成する業務においては、「どうすればよいシステムを作れるか」という知見が重要です。
例えば、テストの実施方法を標準化するケースを考えます。
テスト工程の標準化のためには、業務特性やシステム特性を考慮したうえで、テストの観点や粒度を検討しなければなりません。
これに必要なのが、「どのようにテストをすれば品質が向上するか」という知見です。
テストにかけられる工数は限られますので、どこに力を掛けるかを考慮するためには、効率的なテスト方法について知っている必要があります。
有効なレビューコメント
PMOは全体進捗会議などで、プロジェクトの進捗を是正するために様々なレビューコメントを行います。
この際、実効性のあるコメントを行うためにはシステムに関する知識が必要です。
例えば、プログラム開発工程において遅延が発生したとします。開発側の対応策が不十分だった場合、PMOは是正をしなければなりません。
この時、とれる対応策は「リソースの強化」「優先度の変更」「リスケジュール」「後工程の簡略化」などがあると思いますが、それぞれ一長一短といえます。
プロジェクトの現状を見ながら、どの施策がベストなのかをPMOは経験から導き出さなければなりません。この際に、システム導入・開発の経験が有効といえます。
PMO力を向上させる方法
PMOとしてのスキルを向上させるためには、どのような取り組みが考えられるのでしょうか。以下では、「実務」「資格」「研修」の3つの観点で紹介します。
実務経験を積む
PMOスキルを向上させる最も効果的な方法は実務経験を積むことです。
これまでご紹介してきた通り、プロジェクトにおいて発生する課題は非定型のものであり、経験をベースに臨機応変に対応しなければなりません。
そのため、仕事において実務経験を積むことで、自身の引き出しを増やすことができます。
また、PMO業務だけではなく、SE・エンジニアやITコンサルタントなどPMO以外の仕事から得られる経験も役に立ちます。
PMとしてシステム開発に携わった経験はもちろんのこと、エンジニアとして設計やレビューなどを実施した経験も、PMO業務において有効活用できます。
資格の取得
資格の取得もスキルアップの一つの方法です。
実務経験で獲得できるスキルには高い価値がありますが、一方で得られる経験は必ずしも網羅的なものではありません。
プロジェクトに携わる中で、経験できない領域も出てきます。
資格を取得することのメリットは、網羅的かつ体系的に知識を身につけることができる点です。
資格取得のために学習することで、自身がこれまで触れてこなかった領域を補うことができます。
米国PMI本部が主催するPMP資格や、日本の情報処理推進機構が主催するプロジェクトマネージャ資格、また日本プロジェクトマネジメント協会が主催するPMC資格、PMS資格、PMR資格など、PMOに関連する資格取得を検討してみてはどうでしょうか。
研修の受講
資格の取得は、どうしても座学が中心となりがちです。
資格取得における座学で得られる知識は限定的であり、一般的に定着率も高くありません。研修を受講することで、定着率の高い学習が可能となります。
プロジェクトマネジメントに関する研修は様々な企業・団体で実施されています。
例えば、JUAS(一般社団法人 日本情報システムユーザー協会)では、ITやシステム導入に関連する全般的な研修を提供しています。
プロジェクトマネジメントに関する研修も様々用意されているため、受講を検討してみてもよいでしょう。
一方で、研修の受講には一定の費用と時間がかかりますので、ポイントを絞った受講をおすすめします。
PMOとして活躍するために
この記事では、PMO人材として活躍するために求められるスキルや、資格の取得などスキルの習得方法についてご紹介しました。
PMO業務を実施するためには専門的なスキルが求められますので、PMO人材としてキャリアアップを考えている方は日ごろから自身のスキルアップを意識して仕事を進めていくとよいでしょう。