どんなスキルセットが必要?PMOの役割、業務内容、取得すべき資格とは

公開日:2022.09.05(月) 更新日:

PMOの業務内容に必要なスキルセットを解説

PMOは、プロジェクトを成功させることが仕事です。そのため、必然的に様々なスキルセットや知識が必要になります。プロジェクトはどのような業界でも存在します。

また、それぞれの案件・業務で求められる役割は異なり、PMOに求められるスキルセットをあげるとキリがありません。

そして、PMOはスキルだけでなく、プロジェクトでの実務経験も求められます。管理関連のスキルセットなど、仕事を通してでしか身につけることができないモノもあるためです。

そのため、PMOを目指す上では必要なスキルを実務が伴わない形で学習しようとすることは一般的には推奨されません。

まずはどんなプロジェクトでも必要になる一般的なスキルセットを身につけた上で、PMOとしての仕事を開始することが理想になります。

そして、その上で、仕事をこなしながら理想のキャリアプランを考え、資格試験なども利用しながら必要なスキルセットを身につける努力をしていくことがおすすめです。

PMOの主な役割と仕事内容

PMOの主な役割と仕事内容
PMOはプロジェクトを成功させるための仕事が求められ、その役割、業務、スキルセットは案件によって異なるものになります。

それぞれの案件特有のタスクもあるため、状況に合わせた臨機応変な対応が求められます。

どのプロジェクトでも求められるのは、マネジメントの役割です。常にプロジェクトの状態を把握し、必要に応じて対策を講じます。

1.プロジェクト計画の策定

プロジェクトを成功させるには、その目的を正確に理解し達成するための計画を立てる必要があります。

まずはプロジェクトの要件と目的を正確に確認し、その上でそれを実現するための手段を詳細に調査します。

具体的には、「そもそも成功させることはできるのか?」、「どのくらいの時間がかかのか?」、「どんなリスクがあるのか?」などを調査し、実施することになった場合は具体的な計画を立てます。

また、プロジェクトを進めていく上で、想定外の事態が起こった場合はそれを考慮して新たな計画を立てる役割も担います。

2.プロジェクト推進

計画を立てた後はプロジェクトの管理および推進を行います。そのための業務は多岐にわたります。まず、プロジェクト計画にしたがって必要なタスクを洗い出します。

WBS(Work Breakdown Structure)を作成するなどして、タスクごとに主に以下の項目を具体的に決定し、計画が適切に進むよう管理します。

  • 各タスクの内容
  • 成果物
  • 担当者
  • 期限

また、メンバーが円滑にコミュニケーションを取れる環境を作ります。具体的には、主に以下のようなタスクを実施します。

  • プロジェクト内でのコミュニケーションルールの作成
  • ツールの導入
  • 必要な会議体の運営・管理

メンバー間のやり取りで生まれる重要な情報が埋もれ非効率なコミュニケーションとならないようプロジェクトには一定のルールが必要になります。

また、コミュニケーション用のアプリなどを導入することも効率化に繋がります。

そして、必要に応じて定例会などをPMOが運営し、部署間にまたがるコミュニケーションも活性化させていくことで、生産性の高い環境を作ることができます。

また、プロジェクトメンバーの教育や指導も行います。

たとえば、新規参画者にプロジェクトのルールを教えることもプロジェクトを管理する上で重要な業務になります。

3.プロジェクトの監視

プロジェクトを管理推進していく上で、想定通り計画が進んでいるかを確認することもPMOの重要な業務の一つです。

適切な進捗管理の方法は案件によって異なります。

タスクや課題関連の管理のツールを導入して各メンバーにそれぞれタスクの進捗を入力してもらい、そこから情報を吸い上げ状況を確認する方法や、各チームのマネージャーにそれぞれのチームメンバーの進捗を管理してもらい、プロジェクトの定例会などでその情報を共有してもらう方法などが一般的です。

その上で、期限を過ぎているにもかかわらずタスクが完了していないものがあれば対策を講じます。具体的には、担当者にリマインドする場合や、完了できない原因の追及が必要な場合があります。

4.プロジェクトの問題点把握と改善

PMOにはプロジェクトを進めていく上での問題点を検知し、解消していく役割も求められます。

例えば、作業がプロジェクト計画通りに進んでいないことを検知した場合、まずその原因を調査します。

原因は、担当者の技術や能力が不足している、作業が非効率な進め方になっている、工数の見積が甘く実際には膨大な作業が必要だった、など、様々な原因が考えられ個別に適切なソリューションを考えていく必要があります。

作業に適したスキルセットを持つ人材の新たな雇用を検討する、プロジェクトのルールを見直し生産性の高い方法に改善する、計画を見直す、など原因に合わせて最適な対策を講じます。

そして調査の結果問題が予算の範囲内で解決できない場合や、スケジュールが遅延してしまう場合などプロジェクトに取って重大な問題である場合は、経営側にエスカレーションを行うこともPMOの業務になります。

プロジェクトで発生している問題を正確に伝え、それに対する組織の意思決定を支援します。

将来性、キャリアプラン

将来性、キャリアプラン
PMO人材は今後も高い需要を維持することが予想されます。

プロジェクトはどの業界でも企画されるため、PMOの役割をこなすことができる人材はどの業界でも需要があります。

特に経済産業省が政府のサイトで発行するレポートが示す通り、現在はIT人材が不足しており、今後もその流れは続くことが見込まれています。

IT関連のプロジェクトでは今後も人材不足が見込まれるため、そのプロジェクトの管理ができれば、より需要が高い人材になることができます。PMOのキャリアプランとしては主に3つ挙げられます。

1.社内PMOとして経験を積んでいく

社内プロジェクトのPMOメンバーとして経験を積んでいくことになります。

メリットとしては、PMOとしての経験が無いまたは浅い場合やスキルセットが無い場合でも、働ける可能性が高いということです。

社員に経験を積ませて成長させることは会社にとってメリットがあるため、社内でのPMOメンバーの募集に応募する形で採用されることがあります。

ただし、自社のプロジェクトしか経験できないため、幅広いスキルセットや経験を積むという上では難しくなります。

2.コンサルティングファームへの転職する

PMOとしての業務をこなすことができれば、コンサルティングファームに転職することも難しくありません。

基本的にファームにはPMO関連の案件を多数集まってくるため、常にPMOの仕事ができる人材が募集されています。

また、コンサルティングファームには様々な業界から案件が集まってくるため、多様な経験を積むことも可能です。

ただし、コンサルティングファームへ転職する場合は、プロジェクトでの実務経験とある程度のスキルセットが求められます。

3.フリーランスとして独立

PMOとして実務経験を作れば、フリーランスとして独立することも選択肢の一つになります。

PMOはフリーランスと働き方と相性が良く、フリーランスを募集しているプロジェクトは無数にあります。

外部の人間は社内政治の影響を受けないためプロジェクトを成功させる上で合理的な仕事ができるなどの理由で、フリーランスにPMO業務の委託を検討する企業も多く存在します。

また、フリーランス側としても様々な企業の案件を通してPMOとして求められるスキルセットを充実させていくことができる、などのメリットがあります。

PMOに求められるスキルセット

PMOに求められるスキルセット
PMOのメンバーとして転職や求人への応募を検討しているのであれば、求められるスキルセットは基本的には事前に身につけておきたいと考える人がほとんどでしょう。

しかし、PMOに求められるスキルセットは案件によって違い、その上、ほとんどのプロジェクトで求められる一般的なスキルセットだけでも多岐にわたるため、事前に全てのスキルセットを揃えようとすることは現実的ではありません。

まず、重要となる管理関連・コミュニケーション関連のスキルセットは現場で仕事を通して身につけていくことが推奨されます。

また、技術関連のスキルセットは基本的に資格試験などである程度身につけることができますが、種類が無数にあるため事前に全てのスキルセットを習得ことは困難です。

そして、場合によっては案件に参画した上で仕事を通してでしか身につけられない特殊なスキルセットもあります。

そのため、求められるスキルセットはPMOの仕事をこなしながら身につけていくことがおすすめになります。主に以下のスキルセットが求められます。

1.コミュニケーション関連のスキルセット

コミュニケーション能力はPMOに最も求められるスキルセットになります。

プロジェクトを管理していく上で、PMOメンバーは開発担当者、業務担当者、チームリーダー、経営者、クライアント、など様々な職種やバックグラウンドを持つ関係者とのやり取りが発生します。

各メンバーと効果的にコミュニケーションを取ることができれば、プロジェクトを推進する上で理想的な生産性の高い環境を作ることができます。

直接のやり取りだけでなく、メールや報告書などを通しての文字でのコミュニケーション能力必要になるので、Word、Excel、PowerPointなど基本的なビジネスツールは使いこなせる必要があります。

また、海外の会社とのやり取りが発生するプロジェクトであれば、英語や中国語などのスキルセットが求められることもあります。

そして、プロジェクトメンバーが高いモチベーションを維持した状態で仕事ができるよう伝え方に注意し適切な言葉選びができる能力も重要になります。

PMOは時にメンバーに対し、仕事内容の不備や遅延に対して注意し改善を促すことや、残業を依頼することもあります。

その際、人間関係でトラブルになるとプロジェクト推進の弊害となるため注意が必要です。日々のコミュニケーションを通じて、プロジェクトメンバーから信頼を得ておくことが重要になります。

2.プロジェクト計画・管理のスキルセット

PMOの業務にはプロジェクトの計画策定とその管理が含まれるため、計画および管理関連のスキルセットは必然的に求められます。

計画を策定する場合、プロジェクトの目的を正確に理解し、その達成のために必要となるものを正確にタスクに落とし込んでいく力が求められます。

スケジュールを立てる際は、タスクの前後関係や優先順位などを把握し、プロジェクトが効率的に進められるように計画を立てます。

管理業務では、主に情報を有効活用するスキルセットが求められます。情報を効率的に収集する力、情報を正確に分析する力、そして、その情報をプロジェクト全体に伝える力などが特に重要です。

管理対象としては、プロジェクトの予算、タスク、リスク、など様々ですが、情報をうまく使えることが基本になります。

3.リスクマネジメントのスキルセット

リスク管理がうまくできていない場合、プロジェクトが失敗に終わってしまう可能性が高まるので、PMOにはリスクをいち早く検知し適切な対応をしていくためのスキルセットも求められます。

例えば、クライアントからその案件の要件に対し、追加や変更依頼が出てくることはよくありますが、その際リスクが無いかどうか調査する必要があります。

要件の追加・変更があった場合は多かれ少なかれプロジェクト計画を変更することになるため、基本的にはリスクと考えることが必要です。

「当初の予算の範囲内に収まるか?」、「決められた期限までにプロジェクトを完了できるか?」、「成果物の品質が下がる恐れはないか?」など、その影響を調査します。

その上で、プロジェクト成功の大きな弊害となる場合は、経営層やクライアントに相談し何らかの対策を講じます。

具体的には、要件の追加・変更を中止する、次回のプロジェクト期間で対応できるよう調整する、完了期限を延ばす、などが検討されます。

4.技術関連のスキルセット

PMOは開発部門の担当者ともコミュニケーションが取れる必要があるため、技術的な知識も必要になります。

技術関連のスキルセットで必要となるものは案件により異なりますが、基本的には資格試験などを通してもある程度学ぶことができます。

たとえば、IT関連のプロジェクトでは、クライアントからの要件に合わせて開発部門の担当者とシステムの仕様面を決定する役割が求められることがあります。

SEが話す専門用語を含む内容が理解できるスキルセットが求められると同時に、その専門用語を知らない業務部門の担当者に分かりやすく伝えられる能力も求められます。

5.リーダーシップのスキルセット

PMOはプロジェクトを推進していくことが主な役割となるため、メンバーをまとめ上げ引っ張っていく能力も必要になります。

例えば、PMOの主な業務として「プロジェクトの標準化」があります。

仕事の進め方や成果物の作り方などをまとめたガイドラインを作成し、プロジェクトメンバーにルールとして守ってもらう必要があります。

プロジェクト内の業務の効率化を図るというPMOの役割を全うするため必要な業務です。

ただし、プロジェクトでは、それまでは異なる環境で業務を行ってきた他部署や他企業のメンバーと一緒に仕事をすることになるため、業務の進め方で意見が食い違うことはよくあります。

そんな時、PMOはプロジェクトのマネジメントの役割を担う立場として、強いリーダーシップを発揮し意見をまとめていく必要があります。

6.交渉のスキルセット

関係者とうまく交渉する能力もプロジェクトを成功させるために必要になります。PMOは通常、プロジェクトが当初の予定通りに進んでいない場合などに、ステークホルダーと交渉しその課題を解決する役割も担います。例えば、以下のような場合が考えられます。

  • プロジェクト費用が予算をオーバーする見込みとなった
  • 人手の不足により、業務推進が難しくなってきた
  • 当初の期限までにプロジェクトを完了できない可能性が高まった

落としどころを見つけ、うまく関係者に説明して解決に向けて動いてもらう必要があります。

7.適応・順応のスキルセット

PMOはその企業や状況に合わせた方法でプロジェクトを進めていく力も求められます。

企業にはそれぞれに文化があるため、それまでに作り上げてきたルールや業務プロセスなどを抜本的に変えることは、必ずしも適切ではありません(もちろん、抜本的な変化を求めるプロジェクトもあります)。

ルールを変えることは、

  • 初期コストや時間がかかる
  • 周囲の理解を得にくい場合が多い
  • 既存業務の生産性を下げる可能性もある

などの弊害があることも多いです。

そのため、PMOは生産性が低い部分を検知する能力も必要ですが、それと同時にそれを本当に改善していいか見極める能力も必要になります。

その上で、改善することでデメリットが大きい場合などは、そのルールに順応していく必要があります。

必要なスキルセットを揃える上でおすすめの資格

必要なスキルセットを揃える上でおすすめの資格
PMOに求められるスキルセットは資格試験を利用することで身につけられるものもあります。

実務を通して身に付くスキルセットは実践的なものではありますが、同時に案件の内容によって偏ったものになります。

資格試験であれば、その内容を包括的に学ぶことができるということがメリットになります。

日本PMO協会認定資格

一般社団法人日本PMO協会(NPMO)が提供するプロジェクトマネジメント関連のスキルセットを習得できる資格試験です。

オンラインでの学習と受験が可能になっています。

複数の資格が用意されており、プロジェクトマネジメントの入門レベルのものと、その次のステップのプロジェクトマネジメントの基礎知識がすでにある人向けのものがあります。

PMI®試験

PMI(Project Management Institute)が提供する資格試験です。

プロジェクトマネジメントの国際資格として海外でも普及しています。

プロジェクトマネジメント関連の体系的な業務知識やスキルセットを身につけることができます。

プロジェクトマネージャ試験

独立行政法人情報処理推進機構(lPA)が提供するプロジェクトマネージャーを目指す人向けの資格試験です。

IT関連のプロジェクトに関しての内容となっていることが特徴です。

システム開発関連のプロジェクトで必要になる知識やスキルセットを体系的に習得することができます。

P2M資格試験

日本プロジェクトマネジメント協会が運営する資格試験です。プロジェクトマネジメントの世界標準として広く普及している「PMOBOK」も配慮した内容となっています。

プロジェクトマネジメントの実行の基盤となる3領域(事業経営基盤、知識基盤、人材能力基盤)を中心に学習を進めていくことができます。

まとめ

まとめ
この記事ではPMOに求められるスキルセットを中心に説明しました。

PMOはプロジェクトの推進が主な役割となるので、自分の力で全てを解決しようとするのではなく、むしろ他のメンバーのスキルセットを正確に把握し力を借りる形で仕事を進めていくことが求められます。

そのため、プロジェクト管理のために必要なスキルセットは挙げればキリがありませんが、必要なものを全て持っていなくてもPMOとして働くことは可能です。