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- 開発プロジェクトにおけるPMOの体制や役割分担を体験談をもとに解説
公開日:2023.07.26(水) 更新日:
プロジェクトを効率的に進めていく上で重要なPMOの役割について
PMOとは、「プロジェクト・マネジメント・オフィス」の略で、その名前の通りプロジェクトのマネジメント業務が主な役割となる組織を指します。
全てのプロジェクトで必ず導入されるわけではありませんが、規模がある程度大きなプロジェクトであればPMOは基本的に必須になります。
プロジェクトを効率的に進めていく上では、スケジュール、タスク、課題などあらゆる要素を管理する仕組みが必要です。
PMOはマネジメント関連の業務で責任を持つ部署であり、プロジェクト推進において中核の役割を担います。
本記事では、PMOコンサルタントとして働いてきた私が、PMOの役割を体験談を交えながら解説します。
PMOという職種の役割について
実際のPMO案件を経験すると、PMOとはマネジメントだけでなく多種多様な役割を持つ組織であることがわかります。
プロジェクトの種類も多いため、PMOとして仕事をしていくためには、幅広い知識、スキル、経験が求められます。
しかし、プロジェクトはどんな企業でも企画されるものであるため、PMOコンサルタントとして働くことができれば将来の活躍の幅を広げていけるようになります。
そもそもなぜ必要?プロジェクトにPMOを配置するメリットについて
プロジェクトを、目標とする予算や期間の中で成功させるためには、タスクや課題など様々な要素を管理する仕組みが必要です。
そのため、企業のプロジェクトには管理を行う組織としてPMOが配置されます。ただ、これを聞くと疑問に思う人も多いはずです。
PMOを配置していないプロジェクトであっても成功しているケースはあるため、PMOは不要だと思っている人は割と多いのではないでしょうか。
厳密に言えば、プロジェクトを推進するために必要となるものは、PMOではなくマネジメントになります。
つまり、PMOはプロジェクトに必須というわけではありません。
たとえば、「〇〇の認定資格を取る」という個人のプロジェクトを立ち上げた場合、一人で行うものなので当然PMOは置かないでしょう。
しかし、この場合もプロジェクトマネジメント自体は行っているはずです。
参考書や資格学校の授業などの学習計画を立てる、理解できなかった部分を調べる、模擬試験を受けてみるなどの段取りを組むことが必要です。
このような個人のプロジェクトであっても、マネジメントスキルの有無によってその成功確率は変わってきます。
PMOは必須ではないが、必要不可欠となるケースが多い
プロジェクトへのPMOの導入は、あくまでもマネジメント業務を円滑にするための一つの手段に過ぎませんが、企業で企画されるプロジェクトでは必要不可欠となる場合がほとんどです。
企業のプロジェクトは大規模で複雑なものである場合が多く、効率的にマネジメントを行わないと頓挫してしまう可能性が高くなります。
例えば、新規事業を作るプロジェクトを立ち上げる場合、製品やサービスの詳細、製造のための業務プロセス、必要なITシステムの導入など、様々なタスクを同時に進めていく必要があります。
想定外のタスクや課題が発生することも多く、常にプロジェクト全体の状況を詳細に把握し、スケジュール、スコープ、リソースなどを調整していく必要があります。
PMOを導入することで、プロジェクト内部のリアルタイムの情報を把握しやすくなります。
結果、効率的にタスクや課題に対処していくことができるようになり、経営層も各マイルストーンで適切な判断を行いやすくなります。
求められる役割の違いについて
PMOと混同されやすい言葉でPMやPLがあります。
プロジェクトの目的に合わせて体制や役割を調整することで仕事を効率的に推進することができるため、計画を立てる際に体制図を作成し、その中で各組織や役職の役割を定義することが多いです。
PM
一般的に、PMとはプロジェクトマネージャーの略でプロジェクトの目的達成に責任を負うポジションを指します。
PL
PLとはプロジェクトリーダーの略でプロジェクトの実行に責任を負うポジションを指します。
PMO
PMOはPMやPLをプロジェクトマネジメント面で補佐する組織を指すため、PMやPLとは明確に異なるものを指します。
ただし、前述のとおりプロジェクトによって組織や役職の名称や定義には違いがあります。
基本的に、プロジェクト開始時点ではまず計画書が作成され、その資料の中で各ポジションが明確に定義されることになります。
プロジェクトに参画する場合は、最初に計画書で各ポジションの役割分担を確認することが必要です。
PMO内部でも役割に違いがある
PMOの内部でも各メンバーは同じ仕事をするわけではなく役割を分担して仕事を進めることになります。
具体的には、打ち合わせの調整や議事録作成などを担当するアドミニストレータ、タスク対応や課題解決などPMOの中核となるエキスパート、PMOメンバーの管理を行うマネージャーといった形でそれぞれ役割に違いがあります。
マネージャーがメンバーの適性を考慮し役割を決定することになります。
実際の現場では、非常に細かく役割が分けられることもあれば、役割をプロジェクトの状況に合わせて変えていくこともあり、様々です。
PMOメンバーには臨機応変に役割をこなしていく力が求められます。
ITスペシャリストが有利!?PMOに向いている人とは
近年は多くの企業でIT関連のプロジェクトが数多く立ち上がっています。
そのようなプロジェクトでPMOにはシステム開発・導入関連のタスクや課題対応が求められるため、システムエンジニアやITコンサルタントとなどの経験がある人材はPMOとして成功しやすくなります。
ITプロジェクトが増えてきている理由は様々ですが、主なもので言えば以下が挙げられます。
- 社会的なDXの活用
- SAPの2027年問題
- 安価なITソリューションの増加
近年は企業のみならず個人で利用するアプリケーションでもDX技術が積極的に導入されています。
企業は時代のニーズに応える商品やサービスを展開していく上で、DXへの適合を強く求められています。
行政側もDXの活用を強く推奨しており、経済産業省はデジタルガバナンス・コードと呼ばれる指針を策定しています。経営者にデジタル化の推進を促す内容です。
また、SAP社が2027年に「SAP ERP 6.0」の標準サポートを終了することを発表しており、このことから新ERPの導入プロジェクトも増えてきています。
SAPとは世界で最も需要が高いERP製品であり、日本にも多くのユーザーがいます。
このタイミングで古い業務プロセスの改善を目指す企業も多く、規模の大きいプロジェクトが多くの業界で立ち上がっています。
そして、近年はクラウド技術の発展により、資金の少ない企業でもシステム導入が容易です。
SaaS型の短期で安価に導入できるシステムも多く、特にこの仕組みを利用して大企業のサービスとの差別化を図るスタートアップ企業が増えています。
ここで挙げた例はほんの一例であり、IT技術のニーズは社会的に高まっています。そのことから、ITプロジェクトは多くのビジネスで企画されています。
システム開発や導入を推進していく上では、マネジメント側も当然ITに関する専門用語などを理解できる必要があります。結果、IT関連のスキルはPMOに強く求められるものとなっています。
【体験談】プロジェクトマネジメントのリアル
PMOに求められる役割はプロジェクトによって違いがあります。
マネジメントスキルやコミュニケーションスキルなど、どのプロジェクトでも必要なものはありますが、プロジェクトで求められる役割に合わせて、知識のキャッチアップなど臨機応変に対応していくことになります。
PMOコンサルの仕事内容や体験談を参考にすると、プロジェクトごとに必要なスキルセットは全く異なることがわかると思います。
ファッション業界でのCRMシステムの導入プロジェクト
概要
アパレルや化粧品を販売する企業で、顧客の趣味嗜好に合わせたサービスや情報提供ができる仕組みを整えることが目的のプロジェクトでした。
具体的にはSalesforceの導入をメインとし、国内だけでなく海外の店舗も含め顧客データを一元管理し組織全体で有効活用できるシステムを構築しています。
ECサイト、メール、LINEなど、各チャネルから顧客と情報の受発信が行える環境を作り、その過程で得たデータをSalesforceで管理できるようにしています。
店舗スタッフの顧客データを参考にした適切な接客、顧客の属性に合わせた新商品の情報提供などに役立てられています。
本プロジェクトではPMOとして、各ベンダーのシステム開発におけるタスクや課題の管理を担当しました。
軸となるSalesforceに他システムで収集した顧客データを連携するためのAPIや、情報を分析し見える化する機能、顧客に情報を発信するシステムなど、多くの仕組みを構築する必要がありました。
PMOでは全体の業務およびシステム要件を管理し、プロジェクト内部の関係者に必要な情報を共有した上で、各開発の進捗や発生した課題対応支援などの役割を求められました。
本プロジェクトにおけるPMOの役割
本案件では、クライアントからITのスペシャリストとしての役割を強く期待されていました。
Salesforceの導入、不足する機能のアドオン開発、SaaS型の外部サービスとの連携の推進などです。
PMOは特定のIT製品に関しての深いノウハウが求められることは少ない職種ですが、全体を俯瞰でき各システムの担当者の力をうまく借りてプロジェクトを推進していく力が必要なことは多いです。
深いというよりは広い知識や経験が求められます。
この案件は、特にシステム開発での経験が活きるプロジェクトとなりました。
IoT技術を活用した次世代の自動車開発プロジェクト
概要
ネットワークと繋がる自動車を開発するプロジェクトで、IoT技術を活用する安全を目的とした機能開発を数多く行いました。
衝突などの事故を起こしてしまった場合、自動車から自動的に位置情報などのデータがコールセンターに発信されるシステムを構築し、初動対応の迅速化を実現しています。
また、日々の運転に関するデータを収集する仕組みも構築しており、ドライバーが自然と安全運転を心がける環境を作っています。
保険会社と連携し、安全運転をすることで保険料が下がるような枠組みが作られています。
本プロジェクトは規模が大きく、PMOには多くの役割が求められています。
PMOだけでも数十人のメンバーがおり、規模が大きいことからプロジェクトの途中で業務PMOとシステムPMOの二つの組織に分かれることになりました。
効率的にプロジェクトを推進できる体制を作ることが特に求められています。
経営層、業務部門、システム部門、自動車工場の担当者など多くの関係者と仕事を進めていく必要があるため、PMOには様々な専門知識を理解し、円滑にコミュニケーションを取っていけるスキルが強く求められるプロジェクトでした。
本プロジェクトにおけるPMOの役割
本件は、最も典型的なPMO案件と言えます。PMOとして最も重要なマネジメント業務の遂行がメインの現場でした。
関係者が非常に多い数百名規模のプロジェクトであるため、適切な管理が必要になります。
例えば、PMOのスケジュール調整にミスがあると、様々な関係者のタスクが止まってしまいます。
タスク、課題をしっかり管理し、プロジェクト全体の生産性を極限まで高めて行くことはPMOの主な役割の一つです。
本案件は、PMOに特殊なことが求められていたわけではなく、PMOの当たり前の役割を丁寧にこなしていくことが重要なプロジェクトでした。
不動産業界での商業施設開発プロジェクト
概要
商業施設で顧客が理想的な買い物ができる環境を作ることが目的のプロジェクトです。
既存のERP、CRMシステムへの機能追加、スマホアプリの改善、各拠点で運用していたポイント管理システムの統合など、既存システムに新規機能追加や改善を行っています。
ゆくゆくは高度にパーソナライズ化されたサービスが提供できるようになることを目指しています。
このプロジェクトでは、開発された機能がしっかり要件を満たすことができるものになっているかを確認することがPMOとしてのメインの役割になっています。
つまり、システム開発におけるUAT(受入テスト)の責任者という立場です。
不動産会社にはシステム開発のノウハウはなく、機能の実装は全て外部のITベンダーに委託する形を取っていました。
PMOはその成果物確認の最適な手段を考え、関係者間でコンセンサスを取り、計画を作成した上で、テスト実施もサポートしていくことが求められています。
システムごとに適切なテスト方法は異なるため、多くの関係者と調整・交渉をしていく必要があります。
たとえば、POSシステムは商業施設の店舗スタッフ、ERPやPOSデータの分析機能は本社の従業員がテスト担当者として適任です。
また、データ分析ツール(Tableau)など少しITの専門知識が必要なものは、ITベンダーにフォローもお願いする必要があります。
このように、テスト担当者や実施方法を詳細に決め、実施の際は進捗や課題を管理していくことがPMOの役割となりました。
本プロジェクトにおけるPMOの役割
本プロジェクトはPMOに少し狭い領域の役割が求められています。
前述の通り、現場によって求められる役割、経験、スキルには違いがあります。
本案件はシステム開発系のプロジェクトで、クライアント側の立場でベンダーから納品された成果物の品質チェックが求められるものでした。
基本的にプログラミング工程でのタスクや課題のマネジメントはPMOではなくそれぞれのベンダに任せることがこのプロジェクトのルールとなっています。
その上で、PMOにはベンダーが開発したシステムをしっかりテストする形で間接的にマネジメントしていくことが求められました。
クライアントによっては、「プログラミング工程までしっかり管理すべき」と考える企業もあれば、「開発部分は専門家であるベンダーに任せるべき」という意見を持っている場合もあります。
PMOは時にクライアント企業の文化や考え方に合わせる形での柔軟な対応力も必要になります。
まとめ
本記事では主にPMOの役割について説明しました。
PMOの主な業務はマネジメントですが、プロジェクトによって役割は異なります。
求められる役割を正確に理解し臨機応変に対応していく必要があります。