PMOはリスク管理に有効?リスクのマネジメント方法、対応を紹介

公開日:2025.01.10(金) 更新日:

プロジェクトの成否を左右するリスク管理。PMOはリスク管理にも有効!

PMOはリスク管理に有効?リスクのマネジメント方法、対応を紹介

プロジェクトのリスクを適切に管理できていますか?適切なリスク管理ができなければ、プロジェクトが失敗し企業活動に大きな影響を与えるおそれがあります。全社のプロジェクトを横断して支援するPMOは、リスク管理においても有効な組織です。PMOを有効に活用し、適切なリスク管理を行いましょう。

プロジェクトマネジメントにおけるリスクとは?

プロジェクトマネジメントにおけるリスクとは?

プロジェクトにおけるリスクとは、プロジェクトマネジメントの世界標準ともいえるPMBOKによると、以下の様に定義されています。

「それが発生すればプロジェクトの目標にプラスまたはマイナスの影響を与える不確実な事象または状態」

一度、リスク管理を誤り問題が発生すると、プロジェクト失敗の原因となりかねません。場合によっては企業活動に影響を与えるおそれがあります。

また、プロジェクトマネジメントにおける、満たすべき指標にQCD(Quality:品質、Cost:コスト、Delivery:納期)がありますが、近年はこれにR(Risk:リスク)を加えたQCDRが重要視されています。

それほど、リスク管理の重要度が高まっているのです。

参考:PMBOKガイド
https://www.pmi.org/

PMO活用によるリスク管理のメリット

PMO活用によるリスク管理のメリット

PMでもPMOでもリスク管理が重要であることは変わりません。しかし、PMがリスク管理を一人で行った場合、PMの能力に頼った運営となり、全社のリスク対策が一定にならず、ばらつきが生じる可能性があります。場合によっては、リスクを回避できずトラブルに発展することもあるでしょう。

一方、PMOは全社のプロジェクトを横断して支援する組織です。数々のプロジェクトに携わり、リスク管理のノウハウを数多く習得しています。そのため、PMOが全体のリスク管理に携われば、リスクの回避方法や低減方法を組み込んだプロセスを標準化できます。

PMOにより、PMの能力に頼るだけではない、全社としてリスク管理が行える点がメリットです。

PMの能力に頼ることなく →PMの能力に頼るだけではない (12/25)

以上によりPMOによるリスク管理は有効な手法といえるでしょう。

プロジェクトリスクの具体例

プロジェクトリスクの具体例

ここでは、プロジェクトにおける具体的なリスクの事例を紹介します。

スコープがあいまい

プロジェクトのスコープがあいまいな場合、プロジェクトのリスクが高まります。

これは、顧客要求事項に関する情報が不足しているため、解釈にあいまいさが残り、どこまでプロジェクトで作成すべきかが明確にならないためです。

例えば、プロジェクト対象外の成果物まで作成したり、必要な成果物が漏れたりします。

そのため、リスク対策としてもスコープの明確化は、プロジェクトを推進するうえで必須になります。

プロジェクトの計画不備

プロジェクトの計画不足もプロジェクトのリスクを高める要因です。

計画不足とは、リスクを見誤り、当初から実現不可能なプロジェクト計画になっている場合です。

例えば、技術的リスクを軽視した結果、開発フェーズにおいて技術的課題を解決するための期間が不足し、納期を遅延したり、品質不良の成果物が作成されたりします。

リスク対策としても実現可能なプロジェクト計画の立案が重要です。

リソース不足

プロジェクトリスクを高める原因として多いのはリソースの不足です。

これは、プロジェクト間のリソース管理が適切に行われていない場合に発生します。

例えば、プロジェクトにアサインしたプロジェクトメンバーが、別のプロジェクトに取られスキルを持ったメンバーを確保できない場合です。

近年は人材の不足によりどの企業も人手不足に悩まされているのが現状です。そのため、リスク対策としても適切なリソース管理が重要になります。

顧客の仕様変更

顧客の仕様変更もプロジェクトリスクの一因です。

近年の生成AIやDX対応により、顧客の要求仕様が急に変更される場合があります。そのため、リスクへの対策が必要です。

例えば、要件変更に強い開発手法であるアジャイル開発を採用したり、必要な機能の段階的リリースにより納期を調整したりする方法があります。

リスク対策として、ある程度の仕様変更を見越したプロジェクト推進が必要です。

コミュニケーションの不足

コミュニケーション不足もプロジェクトリスクとして多いケースです。

要求仕様のすり合わせや定例会を開催しても、議事録を作成し共有しなければ認識の違いが生まれるおそれがあります。認識が異なったままプロジェクトが進めば、納品された成果物に対して仕様と異なるという評価になりかねません。

こうなると、お互いの認識を確認するドキュメントがないため、「言った」「言わない」の争いになり、プロジェクトは失敗する可能性が高くなります。

基本的なマネジメント項目ですが、リスク対策として良好なコミュニケーションはプロジェクト成功に欠かせない要素となります。

PMOによるプロジェクトのリスク管理例

PMOによるプロジェクトのリスク管理例

プロジェクトリスクはプロジェクト失敗の要因です。リスクのないプロジェクトはありません。リスクが発生する前提でリスク管理を行いましょう。

PMOはプロジェクト経験の蓄積により、豊富なリスク管理の経験を持ち、効果的なリスク管理ができるでしょう。ここでは、プロジェクトの基本的なリスク管理の4つのステップを紹介します。

リスクの特定

はじめにリスクの特定を行います。タスクや予算、リソースに至るまで想定されるリスクをすべて洗い出す必要があります。

また、リスクの特定はプロジェクト当初だけではありません。定期的にリスクの特定を繰り返し、新たなリスクがないかを確認しましょう。

PMOが組織されていれば、特定されたリスクを記録し管理します。PMOによりプロジェクトチームはリスクを共有し、対策を検討しやすくなります。

リスクの分析・評価

特定したリスクの顕在化する確率、影響度を分析・評価し、対策の優先度を決定します。

優先度の決定は困難な作業ですが、PMOが組織されている場合は、プロジェクト経験からある程度予測できるようになるでしょう。

PMOはリスク評価において定性的評価(高・中・低など)や定量的評価(損失金額など)を使い分け、リスク管理の効率を高めることが可能です。

リスク対策の計画・実践

リスクの優先度に沿って、対策を計画し実行します。

例えば、納期遅延のリスク対策として、スケジュールに予備日を組み込むなどが有効です。

PMOが組織されていれば、各リスク対応策の進捗状況を監視し、必要に応じて計画を調整します。

これにより、リスクが発生しても迅速な対応が可能になります。

リスクの監視、リスク対策の評価

リスクマネジメントは1度対策して終わりではなく、継続的に行う必要があります。

例えば、法改正などの外的要因が新たなリスクを生む場合があります。このようなリスクに対処するため、定期的なリスク分析を実施しましょう。

また、リスク対策の評価は必須です。リスクの特定に漏れ抜けがないか、分析・評価は適切だったか、計画・実行は妥当であったか、などを振り返り有効性を評価します。

PMOはこのノウハウを蓄積することで、全社の資産となるでしょう。

リスクの基本的な対応

リスクの基本的な対応

リスク対策は主なポイントは以下の4つです。

方法 対策 具体例
回避 リスクの可能性をゼロにする対策 複雑な技術を使用するリスクがある場合、よりシンプルな技術を利用して回避します
転嫁 影響を最小限に抑える対策 システム障害のリスクをゼロにできない場合、バックアップサーバーを用意し、即座に復元できる環境を準備します
軽減 リスクを第三者に移す対策 サイバーセキュリティ対策として、専門のセキュリティベンダーに委託します
受容 あえて対策せずにリスクを受け入れる リスクの影響が小さい場合や、発生確率が著しく小さい場合です。ただし、発生時に迅速に対応できるよう準備を整えておく必要があります

過度なリスク対策はコストの増加を招き、生産性の低下を引き起こします。適切なリスク対策を選定しましょう。

記事のまとめ

記事のまとめ

リスク管理はプロジェクトマネジメントにおいて重要な役割です。今後、リスク管理の重要性はますます高くなるでしょう。

また、PMOは全社のプロジェクトを支援し、数々のリスク管理のノウハウを蓄積しています。PMOを有効に活用することで、リスクを回避し経営戦略の目的を達成できるでしょう。

このようにますます需要があるPMOに参画してみてはいかがでしょうか?